シンポジウム白楽ロックビル先生分
第1回研究問題メーリングリスト・シンポジウム その4
「広がりつつある理工系出身者の活躍の場」
2000年3月4日(土)13:00~17:30
白楽ロックビル氏講演
司会 次のご講演は、「米国NIHの科学運営官制度に何を学ぶべきか」です。白楽ロックビル先生、よろしくお願いいたします。
以下、白楽ロックビル氏講演
白楽ロックビルです。今日、私が話す内容は、科学運営官についてです。アメリカの研究費配分に関する科学運営官の話です。したがって、研究費配分の話、研究費配分のシステムを理解してもらわないと、科学運営官の立場、状況、役割がわかってこない。
ただ、このようなシンポジウムで研究費配分の話をするということは、結構不利です。まず、大学院生は、興味ないんですね。研究費配分がどのようになっているのか、日本の状況もご存知ない。研究費のことは先生の仕事です、というわけです。そういったわけで、大学院生は、まず興味を示さない。
すると次のターゲットは、研究者や大学の教官になるわけですが、この人たちも、2極化しております。研究費を貰っている人は、問題を感じても、文句を言わない。まあ、現状でいいじゃないの、貰っているんだから、そう悪いこともないでしょう、と。他方、研究費を貰っていない人は、これは、どんなに良いシステムでも、欠点はありますから、とにかく文句を言うわけです。それで、バイアスをかけないで、冷静に聞いてもらえる状況は、なかなかありません。
巨額の研究費を貰っている研究者は、いずれ科学行政について、官僚にいろいろな意見を述べたり、国のいろいろな委員会の委員になったりします。こういった人たちは、巨額の研究費を貰ってきているので、基本的に現状肯定派です。したがって、改革はなかなか進みません。このような構図もまずいですね。
私が今まで付き合った中で、1番まじめな聴衆は、実は、官僚です。科学技術庁や通産省の官僚が、ひじょうに熱心です。彼らは、ときどき私の研究室に来ます。アメリカのシステムはどうなっていますか? 細かいことですがこれは何ですか? あれは何ですか? と聞く1番熱心な生徒です。
そういった状況ですから、今日は、多分、10人に1人くらいしか聞いてくれないのではないかと思いつつ、不利な戦いの中で話をしようと思います。
先ほど、岩波の林さんが、日本の研究費は結構良いよ、といった感じの話をされました。日本の研究者は、大半のところ、文部省の科研費──今は文部省でなく、学術振興会に移りましたが──そこから科研費を貰っています。
岩波の林さんに反対することを言って申し訳ないのですが、問題点はたくさんあります。研究費の総額が少ない。選考システムが不透明、閉鎖的。審査が公平に行われていない。審査内容を申請者に知らせない。審査が一方通行である。研究費を、薄く広く配分している。近視眼的な流行の研究テーマが採択される。 問題点はたくさん出てきます。現状では、日本はいろいろ問題があるよ、ということを、申し上げました。
私が今日お話することは、5年ほど前に、文部省の在外研究に採択され、海外で10か月間、何を研究しても良いよ、というありがたい状況になった時から始まります。
本来、私は細胞生物の実験科学者なので、実験科学をやろうと思ったのですが、10か月くらいでも、結構ハードに実験し、論文を書いてきます。ただ、10か月間で、新しい実験にチャレンジし、論文を仕上げてくるのは結構たいへんです。それで、ぐずぐずしているうちに、たまたまアメリカ人の友達から、NIHの研究費配分の部署に行かないか、という話がありました。大学院生の頃から、研究体制問題は研究者自身が取り組むべき問題だと思っていました。日本の研究者はどうして本気で研究体制問題に取り組まないのか? と思っていました。それに、アメリカ人の友達の申し出も、何かの運、人生の流れで、その流れに自分の人生を任せてみようと思いました。それで、行ってみようか、という気持ちで行ったんです。
それで、行った先が、先ほど隅蔵先生も少しお話していましたNIHです(スライドを示す)。アメリカの東海岸にある全米最大の生命科学研究所です。左側が1号館です。記念的な建物です。NIHに行かれたら、この1号館の3~4階の左側にあるカフェテリアがおススメです。メシが結構うまい。右側の建物は10号館で、NIH最大の、1番大きな研究棟です。
アメリカの研究費の話をしましょう。
連邦政府からの研究費と民間からの研究費は大体半々です。今日は、民間の研究費の話はしません。連邦政府の研究費は、1ドル100円換算で、96年のものをみます。全分野の研究開発費をみますと、1番が国防総省、軍ですね。陸軍や海軍といった、軍の研究費が、3兆3706億円です。2番目が健康省で、1兆1828億円です。健康省と書きましたが、日本でいえば、厚生省にあたります。
次に、そこの厚生省、つまり健康省のところの生命科学分野だけをみます。健康省の研究開発費の94%が、NIHに配分されます。NIHが、全米の生命科学分野の研究予算ではダントツの1番です。要するに、連邦政府の生命科学の研究開発費を、すべて、NIHに集約して、全米に配っているわけです。NIH自身も、自前の研究所を持っています。けれども、そこでは、NIH総予算の18%しか使っていません。それ以外の82%は、全米の大学や研究所に、研究開発費としてお金を配っているわけです。
大学や非営利研究所の研究者が、NIHに研究費を申請します。それに対してNIHが、審査をし、よければ採択し、研究費をだすという構図です。 今、全米のと言いましたが、皆さんが、日本からNIHに研究費を申請することも可能です。申請してみたら、通るかもしれません。アメリカ以外で通っている人も勿論います。実際には、日本から申請して採択される人は少ない。私は名古屋大学の大学院にいたのですが、岡崎令治さんという、DNAの非連続合成を発見した人が貰っていました。私がNIHに5年前にいたときには、日本からは誰も貰っていませんでした。しかし、カナダやイスラエルなどの研究者は貰っています。
そのNIHが、全米の研究者にお金を配分する仕組みのところを、お話しなければなりません。本来は細かい話ですが、大雑把にいきます。基本的には、研究者がアイデアを練って、申請書を書いてNIHに送る。それをNIHが受理して、その研究費申請書を、担当の研究所と、スタディ・セクション──これは審査会のことです──そこに割り振ります。スタディ・セクションは120部会あります。どのスタディ・セクションで審査するかを割り振るのです。
1つのスタディ・セクションに、審査員は大体14人から20人います。そのスタディ・セクションの審査員のどの人が中心になって申請書を審査するのか? 正確にいうと、それぞれの申請書の審査を担当する人を3人決めます。他の審査員も全部審査しますが、事前に細かく評価しておいて、スタディ・セクションでその評価を発表する担当審査員が3人ということです。
2月に受理した申請書は6月に1次審査を行います。1次審査がつまりスタディ・セクションです。NIHのそばのホテル、つまりベセスダのホテルで行われることが多いです。スタディ・セクションで、審査員はホテルに3日間缶詰になります。3日間で、大体60件くらいの審査をします。1件につき10分から30分くらいですから、たっぷり時間をかけて審査します。
トリアージという制度があります。戦場で兵士が撃たれると、けがをした兵士、瀕死の兵士、死んだ兵士、がたくさん発生します。軍医と看護婦が戦場に行って、負傷した兵士を助け起こして、これはもう駄目だ、こいつは死んじゃうとか、こいつは助けようとか、判断するわけです。要するに、戦場では、医者も看護婦もクスリもベッドも限られているんですね。それで、死んでしまう兵士は放っておいて、これはもう死んじゃえ、と、手当てしないんです。生きそうなやつだけ生かす。トリアージとは、そういった言葉なんですね。ちょっと残酷な話ですけれども、現実です。
それで、審査のとき、担当審査委員の3人が、これはもうどう審査しても無理だよ、この申請書は、といったものがあるとします。各担当審査員がそれぞれ、担当申請書を評価したあと、上位と下位に2分します。スタディ・セクションの開始1週間前、1週間前は推定ですが、各担当審査員がSRAに、下位の申請書はどれかを知らせます。SRAが集計し、3人のうち2人が下位の点をつけた申請書は、もう審査会で審議するのはやめよう。これがトリアージという制度です。効率を図ろう、ということなんですね。ただ、実際の審査会で、トリアージに引っかかって審議しない申請書と判断されていたとします。それでもしかし、「いや、私はこれを審議してほしい」という審査員が1人でもいれば、審議するのです。
したがって、担当審査員は、担当したすべての申請書に対して、きちんとした審議に堪えられる準備をしてくるのですが、効率化のために審議を省くという、そういったことをしています。審査の中身は、研究テーマ、研究計画、申請者の力量などを審査します。そのあと審査結果通知書という、はがき1枚が、ポンと申請者に郵送されて来ます。比較的早く来ます。2週間以内に来ます。評価点もついています。あなたの申請した研究費の審査に関する問い合わせ先は、この人だよ、という記載もあります。その人が、プログラム・ディレクターと呼ばれている、科学運営官の1人です。
日本だと、大体、研究費を含め何か申請しますと、「電話での問い合わせはお断りします」、などと書いてあります。アメリカは、「どうぞ問い合わせてください」、というシステムです。
そのあと、きちんとした審査報告書、サマリー・ステートメントというものが来ます。
そのあとの2次審査は、研究所の政治的・政策的な審査です。例えば、国立がん研究所で乳がん研究重視という政策がかかげられていたとします。そうすると、乳がん研究の申請書をなるべく多く採択する、といったようなことが行われる、かなり政治的・政策的なものです。
2次審査には、したがって、研究者以外の社会学者や、企業の経営者といった人が入ってきて、政治的・政策的なことを言います。
日本も2段階審査です。アメリカの審査も2段階審査ですが、アメリカの1次審査では、研究者が研究の中身の審査をします。それをピアレビューといいます。2段目の方は、政治的・政策的な配慮の審査です。日本は2次審査もピアレビュー評価をしています。そのためだと思いますが、日本の研究費審査の問題点を検討する時、アメリカの2次審査の実情は、あまり興味をもたれません。1次審査が基本的な関心事で、そのやり方を学ぼう、ということです。従って、今回も1次審査を中心にお話しています。
研究者が、NIHに研究費の申請をしたとき、申請書を一手に引き受けるのは、研究評価センターというところです。
SRA、サイエンティフィック・レビュー・アドミニストレーターという肩書の科学運営官で、Ph.D.を持っている研究者あがりの人が、研究評価センターにいます。この人が、120あるスタディ・セクションに、それぞれ1人ずついます。例えば、「細胞生物学・生理学1」というスタディ・セクションを、1人で全部マネージします。何年もマネージします。SRAというこの科学運営官は、1つのスタディ・セクションの審査の責任者です。
もう1つ、プログラム・ディレクターというという肩書の科学運営官で、Ph.D.を持っている研究者あがりの人がいます。申請者である研究者とNIHの間をつなぐ人です。研究者のソーシャル・ワーカーなどといわれています。例えば、国立がん研究所にいるプログラム・ディレクターは、国立がん研究所の研究の中身を担当する科学運営官で、研究者あがりの人です。
スタディ・セクションの具体的状況をお話します。ホテルの会議室で、審査員が座っていて、書類がたくさん積み重ねられています。そこで、審査をしています。中にはひじょうにリラックスしながら審査している人もいて、立ってコーヒーを飲みながら審査している人もいます。
SRAという、研究評価センターから来たスタディ・セクションを運営する人は、座長の隣に座っています。審査会の進行の補佐をします。発言権もあります。ただ、評価点はつけません。この人の助手が1人います。何をするのかというと、雑用係です。書類を配布したりします。審査員は申請者と利害関係があると審査会場の外に出なければなりません。その人のケアをしたり、「終わったからまた入ってきて下さい」、と声をかけたりということもしています。
それから、各研究所の科学運営官である、プログラム・ディレクターがスタディ・セクションを傍聴していて、審査全体の動きを見ています。ただし、発言権はありません。どうして傍聴しているのかというと、自分が担当している研究費申請について、責任があるからです。あとから申請研究者から電話がかかってきます。「自分の評価点が悪いが、どういう点が話題になっていたんだ」、などと相談されるとします。そのときに、このプログラム・ディレクターが、「実は審査会のときに、このような意見やあのような意見があって、そこの評価が低かった」、といったような、審査報告書だけでは汲み取れないニュアンスを、具体的に伝えなければいけません。そのために傍聴しているのです。
このようなシステムで、アメリカの研究費の1次審査が進むわけです。ABCと書いてあるのは、この3人の担当審査官です(スライド)。申請書類ごとに、3人の担当審査官が選ばれて、審査しているわけです。
このようなアメリカのシステムの中で、ああ良いなと、日本で、是非導入するといいなというシステムが、大きく3つあります。
1つは、英語でいうとConflict of Interestsです。日本語でいえば、「利害関係の排除」です。利害関係を徹底的に排除するシステムです。まず先に、具体的な例を言います。申請者に、家族・親族・同じ大学・自分の弟子・先生筋・親しい友人にあたる人がいたとします。例えば、自分の弟子からの申請書類が来たら、その審査員は、評価点をもちろんつけられません。自分の奥さんが申請してきたなどということ。これももちろん家族に入るので。こういった例は結構あるのですが。これらの申請書を、審査員は審査できません。それどころか、審査会場から一時退出するという格好です。他にも、感情的にフェアになれないケースも審査できません。あとは、お金がらみですね。申請者の所属機関のコンサルタントや役員、株主、申請内容に関係した株や株式オプションを持っている場合は、それに関係した審査はできません。ひじょうに厳密です。
良く知りませんが、日本はどちらかというと、これとは逆で、審査をするとき、審査員は、自分が得しようとする、自分の得になるから、面倒な審査を引き受けている、と考えている節があります。偉くなって、役職に選ばれて、自分が得をする、役得の世界ですね。アメリカは、偉くなることは、国民の得になるように働く、ということです。
この利害関係の排除を保つための、実際の手続きとしては、審査会場に入るときに「利害関係はありません」とサインします。「ここで話をしたことは、一切外に漏らしません」ともサインします。もちろん、審査会の冒頭でも、SRAが、利害関係の排除や守秘義務のルールをきちんと説明します。審査に利害関係がないだけ人が、審査するわけです。
審査終了後でも、利害関係がなかった旨や、今後も秘密を守る旨の誓約書にサインし、評価点とともに返送します。最近、科学技術庁の人から、「これを破っちゃったらどうなるの」と質問されました。アメリカの上司に問い合わせたところ、「法律的には、逮捕されるといったことはありません。そのようなペナルティはありませんが、2度と審査員を依頼されません。また、いろいろとこういったレベルの委員などには、まずなれません。研究者社会の中で、この人は非倫理的な人だと認識されます。そういった倫理上の問題です」、と言われました。この「利害関係の排除」が、日本に是非導入するといいなというシステムの1つです。 日本に是非導入するといいなというシステムの2番目は、審査した内容を、サマリーステイトメント(Summary Statement)という「審査報告書」にまとめ、申請者に郵送することです。ここに示した例は、英文ですが、これが1ページ目です(スライド)。プログラム・ディレクターの名前が書いてあります。この人が担当官だよ、とわかります。これには評価点が書いてあって、あなたの申請書は何点ですよ、これは採択でお勧めですよ、などと書いてあります。中身が、どのように良いとか悪い、といったことは、そのあとに、A4の紙に2、3ページに渡って書いてあります。4枚目に審査員の一覧表が、ずらずらと並びます。要するに、こういった審査報告書が、申請者にきちんと渡されるということです。日本にはこれがないんですね。
今、実際のものを見せました。この「審査報告書」は、申請研究の概要、良い点、悪い点、研究者の遂行力や設備の体制、予算の妥当性が詳しく書かれています。申請書の不備な点がいろいろ指摘されます。ですから、不採択の時は、あとでそれを直して、また申請が可能です。改定版を申請するときは、前の申請書の不備な点、指摘された追加実験などに対応していないと、即、また落ちてしまいます。どこをどのように直しました、ということを、きちんと書かなければならない。そのようなシステムです。そういったことによって、アメリカの生命科学研究の質を上げていこう、という意図です。
審査の内容に文句があれば、クレームも可能です。問い合わせ相手も、もちろん記載されています。それは、プログラム・ディレクターです。プログラム・ディレクターとやりあって、プログラム・ディレクターの言っていることが、僕はどうも納得できないとします。すると、プログラム・ディレクターを越えて訴えることも可能です。さらにそれでも納得できない時は、裁判を起こすこともできます。私がNIHに滞在しているときに、上司が、「ひじょうに珍しいけど、裁判になることもあります。今、1件裁判中です」、と言っていました。アメリカの研究者に聞くと、通常は、審査員の書いたSummary Statementが、ひじょうに役に立つと言います。審査報告書に指摘されていることはまず妥当で、研究の役に立っていると言います。
審査報告書の重要性は、研究費審査に関係しないとわかりづらいと思いますので、例えで言います。論文を書いて、投稿します。すると、レフェリーからいろいろとクレームがついてきますね。ここを直せ、あそこはどうなっているのか。審査報告書もこれと同じです。研究費を申請した時、不採択ならどうして不採択なのか、それなりの理由を示すべきだ、ということです。
日本の研究費の悪口はあまり言いたくありません。ですが、日本の研究費に申請したとき、審査内容について何も言ってこないで不採択にするのは、論文を投稿したときに、何も言わずに不採択、とだけ言ってくるようなものです。
研究論文の投稿では、ここが悪いよ、ここを直したら、と審査内容を言ってきますよね。研究費申請の審査をしたときもそれと同じです。審査の結果によって、採択され、パブリッシュされる論文でも、審査内容を投稿者に伝えることで、論文の質が上がることと同じで、審査内容を申請者に伝えることで、研究の質が上がるんです。ですから、採択された研究課題でも、改善点が指摘されれば、もっと良い研究になります。国民の税金です。なるべく良い研究をしてもらいたいわけです。審査報告書は重要です。
この「審査報告書」が、日本に是非導入するといいなというシステムの2つ目です。
アメリカのことを中心にお話していますが、ここで、若干、全体像を、日本と比較しましょう。アメリカは審査が年3回ありますが、日本は年1回です。アメリカの申請書は厚いです。50ページくらいあります。日本は8ページです。アメリカは、審査報告書を、申請者に送付します。日本にはそういったものはありません。アメリカは、利害関係を排除しています。日本ではむしろ盛んで、役得があるのではないかという気がします。アメリカは、申請書の改定版を受けつけます。日本はそういったことはありません。アメリカは、申請者とNIHが相互通行で、インタラクティブです。要するに、いろいろと言ってくださいよ、というわけです。実際にNIHの研究費配分事務局にいると、アメリカ中の研究者が相談してきますね。そのような状況です。
もう少し、アメリカの研究文化を言います。研究者と政府は上下関係ではなくて、横並びです。基本的な考え方は、政府は金を出すから口も出す。そのような感じです。NIHは大学の研究者にお金を出しますが、いろいろ文句を、ああしろこうしろと言います。研究費をもらうアメリカ人研究者も、NIHにたいしてああしろこうしろと文句を言います。そういったお互いが口を出すシステムで、グルグルと回っています。
これらの研究文化の基本概念は、「説明する必要があるよ」、ということです。「情報公開する必要があるよ」、ということです。そして、「プロセスの透明性が重要だよ」、ということです。したがって、活発な広報があって、結果的に、上下関係でなく、双方向になります。組織の自浄機構があって、自己改革機構がビルトインされているのだろう、と感じます。
日本はなかなか、こうはできない、という感じがします。どうしてそうなるのか。文化もシステムも違いシステムは直せば良いかもしれませんが、文化の違いは、研究費配分のことだけではないと思うんです。
研究費とは全然関係ないのですが、例えば税金を収めるときに、日本は源泉徴収というシステムです。黙ってお金が取られます。しかし、アメリカは黙って取られません。申告で払います。ですから、常に、俺はいくら国に払っているんだ、などと、毎年一度、痛い(?)思いをさせられるわけです。 ですから、それだけ払っているのだから何とかしろ、ということを、普段から思わさせられるわけです。そのような文化の違いも結構あると思います。
さて、日本に是非導入するといいなというシステムの3つ目は「科学運営官」制度です。
科学運営官の存在も大きい、と思います。先ほど、審査報告書を出す、と言いました。けれども、それを書くのは誰か、というと、実際は科学運営官なんです。もちろん、審査員が審査して、フロッピーか何かで提出します。しかし、それをまとめて審査報告書を作り、申請者に通知するのは、科学運営官の仕事なんです。 審査報告書をまとめるのはSRAという科学運営官ですが、もう1人の科学運営官は、プログラム・ディレクターです。私がNIHで滞在したところはプログラム・ディレクターの本家のところでしたから、プログラム・ディレクターの話をします。
この人たちは、研究所に所属しています。例えば、国立がん研究所に所属しています。そのような人は、国立がん研究所だけで、200人くらいいます。それぞれ、特定の研究分野を担当しています。例えば、「がん細胞とがん転移の生物学」が担当です。普通の研究者よりも、少し幅が広いというレベルの領域を担当しています。
担当分野について、全米の研究者に対応します。したがって、1人で大体、200~300人の研究者を知っているし、コンタクトを保っています。この人たちが、どのような研究状況にあるのか知っているわけです。
それらの人たちに研究費申請は採択で「よかったね」、とか、不採択で「駄目だったね」、と報告するだけではありません。その人たちの研究レベルを上げることによって、アメリカの研究が良くなるわけですから、その人たちの相談にのります。助言もします。研究をこのように改善したらいいんじゃないの、と応援もします。単に、精神的な応援もしています。とにかく、それが仕事なんです。そのようなことで、研究者の研究レベルを上げて、アメリカの研究を良くし、それが国民の健康改善に結びつく、という考え方です。
それから、担当分野の研究の動向分析もします。要するに、研究助成をするわけですから、その分野の研究動向を熟知していなければなりません。
それから、新しい分野で、この新人研究者がなかなか良い研究をしている。けれども、どうも申請書を書くことが下手みたいだ、といったような人を応援してあげます。このようなことを記述したら、このような共同研究者と組んだら、などといったようなアドバイスもします。
毎年、国立がん研究所が書いている『年次研究報告書』も書きます。それから、研究所の上司が、メディアに発表するときの原稿を実際に書くのは、このような人たちですね。上司自身ももちろん発表原稿を書くかもしれませんが、個々の細かいことは、プログラム・ディレクターが担当しているんです。 また、例えばサウスダコタといったような州の、あまり研究が盛んでないところの上院議員がいるとします。例えば、「うちの州のがんの転移の分野の研究はどうなっているのか、研究費があまり来ないのだけど」、と質問されると、「はい」と言って、この人が調べて返事をします。要するに、国立がん研究所に、「がん細胞とがん転移の生物学」の関係でくれば、その人がすべて対応するというわけです。そういった担当です。
定期的にセミナーや学会にも出席しています。ジャーナルなども普段読んでいます。普通の研究者とよく似た生活状況です。
私が滞在した部署は、「NIH、国立がん研究所、外部研究委託班、がん生物・診断・研究センター部」でした。大体15人くらいプログラム・ディレクターがいて、全員Ph.D.で、1人医者がいました。大体30歳から65歳くらいで、男女半々くらいです。出身は、全部聞いたわけではないのですが、1人は大学教授、2人は企業の研究者、他はNIHの研究者上がりふうでした。全員、あなたどこから来たの、と聞いたわけではないので、正確ではありませんが。
この15人に対して、サポートスタッフ、つまり秘書ですが、6人います。博士号を持っていませんが、書類整理、コピー、電話などに対応しています。このような体制で、国立がん研究所のがん生物・がんの診断・がんセンター部は、外部から来る研究費の申請に、全部対応しているんです。
私も朝早く出勤したのですが、朝1番早い人は、6時半くらいに来ます。夕方は3時に帰る人もいますが、たいていは5時頃に帰り、最後の人が帰るのは8時くらいです。秘書は6人いて、朝6時半くらいから、夕方8時くらいまで、常に必ず誰かが電話番をします。お昼休みを同時にとる、ということはありません。どこからどのように電話がかかってきても秘書の誰かが取ります。全員で会議をする時もありますが、会議室に電話機があって秘書が取ります。
それから、勤務時間が9時から5時というわけではありません。アメリカは、国内に時差もありますし、外国から電話がかかってくるかもしれません。最初はわからなかったのですが、秘書はトイレに行くのも、「ちょっと出かけるよ」、と他の秘書に挨拶していくんですね。ですから、秘書どうしで、誰が誰の電話をフォローする、というシステムがあります。
科学運営官はアメリカではたくさんいます。数字で見てみます。アメリカの生物関係・医学関係といった、バイオ関係の博士号所持者が、どのような仕事をしているのか? NIHだけで、政府職員が、バイオ関係の博士号所持者で2663人います。NIHは教育機関ではないので、職務内容は研究開発ですね。6割弱の人が研究開発を直接行っていますが、管理・運営・サービスを行っている人が、4割もいるんです。
全米ですと、バイオ関係の博士号所持者が12万4580人います。ここには教育機関も入っていますが、それでもこの全体の3割の人が、管理・運営・サービス業です。
博士号を持っている人の3割が、研究関係の管理・運営・サービスをやっているわけです。そのことによる研究管理の質の高まり、質の良い研究運営ができるのだな、と思います。偉そうな研究者がこのような研究を推進したらとか、何か言っても、科学運営官のほうで中身を判断できるのですね。なかなかごまかせない状況があります。
ではアメリカで、このような職業が、すごく沢山あるのか? となります。この本『Great Jobs for Biology Majors』(B. Camenson著, VGM Career Horizons)は去年の1999年に出た、生物学専攻出身者が就ける仕事を紹介した本です。生物の学部や、大学院を卒業する時の職業選択のアドバイス本です。この本に科学運営官が職位として挙がっているのかな、というと、挙がっていません。通常は、科学運営官という職業が、新卒者向けの職業としてはメジャーなものとして扱われていません。アメリカの学生・大学院生の中でも、それほど、科学運営官というものは知られていないのですね。日本でも、もちろん知られていないと思いますが。 ちょっと特殊な本を見ます。これは1998年に出版された本で、『Alternative Careers in Science』(C. Robbins-Roth著, Academic Press)です。大学や大学院で科学の教育を受け、人によっては、博士号も取得し、実験室で何年も実験科学に携わったけど、今は、実験室以外の仕事をしている人、そういう人がたくさん登場します。科学の中の、実験室以外の職業という本です。科学運営官のことが書いてあります。他に、サイエンス・ライターのことなど要するに、実験室以外の職業の実際とその職業に就いた人の生き方が、いろいろ書いてあります。これは、主として、研究者向けの本だろうという感じがします。要するに、実際、アメリカの中でも、科学運営官は、学生や大学院生向けとしてはそんなにメジャーな職業になっていませんが、いったん研究者になって、ある程度、研究者社会の中に入っていったときに、キャリアーチェンジ、キャリアーアップ(?)して、研究関係の管理・運営・サービスをする。そういった人たちが3割くらいいて、そのような職業の1つが、科学運営官というわけです。
NIHの中の上層部は、ある意味、所長を含め、全部、研究者あがりの科学運営官です。バイオ研究者が、所内の中で科学運営官のトレーニングを受け、いろいろ議論をして、科学運営官として育っていく格好です。
では、日本ではどうなるのかな、と思います。この間、科学技術庁の人が私のところに来て、他のことを話しているときにちょっと言っていました。「1学年で、例えば昭和50年生まれの人で、日本で博士課程の学生は、今1万人くらいいます。毎年1万人くらい博士号が出ます。それで、ポスドクを含め、国立大学や私立大学、国立研究所、企業、全部含めて就職したとします。それでも多分、各学年3000人や4000人の人はあぶれます」。このように言っていました。「どうするのでしょうかねえ、これは」、と彼は冗談っぽく言っていました。「そんなことを僕に言われたって、あなたたちが考えてくださいよ」、と言い返しましたが。 日本は、結局、どんどん大学院生を増やしました。アメリカをまねて増やしていったのですが、いろいろなところで、まだアメリカをまねてないところがあります。なかなか状況が苦しいと思います。東工大の梶先生は、東工大の学部の卒業生は、たくさん求人があるということで、就職を全然心配していない、ということでした。ですが、ドクターを出た人にとって就職は大丈夫かな、となんとなく思いました。
博士号取得者を、実験研究の現場労働者(?)としてしか考えていないと、博士号取得者は仕事にあぶれます。アメリカをまねて大学院生を増やしたら、アメリカをまねて、その3割にたいしては、実験室以外の職業、つまり、研究関係の管理・運営・サービスという職業を用意すべきなんです。その職業の1つが、科学運営官です。
つまり、科学運営官という職を、日本に是非導入するといいなというシステムの3つ目です。
以上です。ご清聴ありがとうございました。
講演は以上です。
司会 どうも、ありがとうございました。今まで気づかなかったような問題・職種が存在していることを知りました。日本との差のようなものを感じました。それでは、質疑応答に移りたいと思います。質問等あるかたは、挙手をお願いいたします。
質問 すみません、先ほどの林です。こういった制度は、どのくらいの時間をかけて、どのようにしてできてきたのか、ということを知りたいと思いました。
白楽 歴史的なことはあまり知りません。NIHは、アメリカの研究所で研究費を配分していく当初から、こういった科学運営官が仕切っていました。当初からだと思います。要するに、アメリカは、「研究所は、研究者が運営する」、ということが原理ですね。例えばどこかの法学部を出た人がマネージメントだけをやって科学研究を運営する、ということはありえない感じです。どうしてありえないか、というと、科学研究の中身がわからないからです。日本の場合ですと、科学研究の中身がわからないから、「先生にお金を差し上げますから、好きにやってくださいよ。お任せします。ただ、変なことしないでくださいね」というシステムです。アメリカは、金を出しますが、口も出します。中身がわかるから、優れた研究者にきちんと研究費を助成し、口も出します。
それで、では科学運営官はどうやって育っていくのかというと、研究者社会の中というか、NIHの中に、トレーニングのシステムをたくさん持っています。ですから、研究者が積極的に科学運営官になりたがります。例えば、私がたまたま会った人は、実験だと土日もラボに行って実験しなければいけない。かなわない、と。遅くとも夜8時くらいには帰って、家族と団欒も持ちたい、と。だから自分は、科学運営官に積極的になりたい、と。それから、大学の研究者は、グラントが5年くらい、長くて8年か9年くらいで切れてしまいます。その度に、結構たいへんなストレスのもとで、グラントを申請しなければなりません。それはとてもたいへんである、と。だから科学運営官になりたい、という人たちがいます。研究者社会のシステムとして科学運営官が内蔵されていて、研究運営は科学運営官がやります。そのような感じです。
司会 後ろのかた。
質問 研究者の方から移ってきて科学運営官になる場合、科学運営官と実際の研究者の間で、かなり行き来があるのですか? 今の場合、研究者から科学運営官になるような話をされていました。実際に、科学運営官と研究者が、人事交流と言ったら変な言い方ですが、相互に転換するということは、結構あるのでしょうか?
白楽 通常、研究者から科学運営官になります。科学運営官から研究者になったケースは聞いたことがありません。科学運営官は審査会の審査員を選びます。その分野で学識のある人をある程度知っていないと、選べません。ですから、学会にも行き、論文も読むし、きちんと話もする。しかし、いわゆる実験科学者に戻ることはないんです。科学運営官の方がいい職業ということでしょうかね?
質問 どうしてこのようなことをお聞きするのかと言いますと、私は農水省にいます。農水省の場合、一部、不完全なシステムですが、研究者が本省の方に出て、2、3年くらい、研究調査官のようなかたちで、研究管理に少し携わるというシステムがあります。その中で、本省の方に残る人間も出てきます。ですが、大抵の人間は、研究をやっている方が良い、ということで戻ってしまいますね。そのように、一応の交流のようなシステムはあります。ですが、それが果たして良いのかどうか、ということも良くわからないところです。そのような次第でお聞きしたわけです。
白楽 研究費配分をする人と研究者が重なっていると、研究費配分を3年間した後、自分が戻った研究所で、得をしようと思うわけです。利害関係が生じます。それから、いずれ戻って行くと思うと本気でやりません。ですから、それはもう切ってしまった方が良いです。
司会 では、前のかた。
質問 こういったアメリカのグラントのシステムを、もし日本で導入するということになるとします。いったい、どこから手をつけていったら良いと思われますか? 日本の場合には、今までの慣習もありますし、国民性もあります。難しいと思われるのですが。
白楽 わかりません(笑)。ひじょうに難しいです。それでも「利害関係の排除」、「審査報告書」、「科学運営官」は、是非、導入していただきたい。これらは基本中の基本です。アメリカの良い部分です。
しかし、アメリカの良い部分を導入すれば日本は良くなる、と単純には思えません。良い部分、例えば人間の心臓が悪いからといって、それを取って、チンパンジーの良い心臓を持ってきたら良いか、というと、そうはいかない面があります。システムは、全体です。ですから、一部だけ持ってくるということは、その一部が優れていても、周囲が対応しないと、難しい。ですが、日本は時代とともに変化しています。かなりアメリカ化しています。現在、日本に「利害関係の排除」、「審査報告書」、「科学運営官」を導入しても、拒絶されないと思います。ただ、どこから手をつけていったら良いのかは、わかりません。すみません。
質問 専門家からの公正な審査がなされるということは、ひじょうに良くわかります。それで、専門家の利害はうまく調整されるかもしれません。しかし、先ほど林さんもちょっとおっしゃいました。場合によっては、その専門家の人たちと一般市民とで、少し立場が違う場合があると思うんですね。例えば、このような領域を重点的に研究してほしい、などです。そういった、一般市民の観点のようなものは、どのようなかたちで入りこむようになっているのでしょうか?
白楽 2次審査というところで、そのシステムが入ってきます。1次審査は、研究の中身だけで審査します。ですが2次審査は、政治的・政策的なことで決めます。それで、最近の例があります。最近でもないかな? エイズの研究に結構多額の研究費が支給されているんです。それは、2次審査の会場にエイズ患者の代表がいて、審査員になっているんです。一部の研究者は、どうしてあんな審査員を入れるのだ、と怒っているそうです。ですが、社会的に強く要請されているので、エイズ研究に、巨額なお金がいきました。2次審査のところで、研究者以外の、法律家や映画俳優や、企業の研究者など、一般の人が入ってきて、社会的ニーズを反映する方策がとられます。
質問 その人選は誰が?
白楽 ちょっと良く知らないのですが、その人選は、研究所の評議会がやると思います。国立がん研究所の場合は、NIHの中では、大統領の命令が直接いく研究所でもあるんですね。従って、大統領の意向、つまり政治的意向、も直接反映されると思います。2次審査会は、ちょっと特殊ですが、大統領の委員からそういった一般市民の代表までが入っています。また、2次審査会の一部は一般市民に公開されています。一般市民らしい人は見かけませんでしたが、2次審査の審査会自身はオープンです。
質問 ありがとうございました。
司会 では、後ろのかた。
質問 今、NIHのお話を伺いました。もし、多少、他の研究所、DOEなどをご存知でしたら、その予算分配をお教え願いたいです。あと、これは全く生かじりな知識ですが、NIHの予算が増えたのは、例の、1969年にアポロが上がったあとに、1970年の国連人間環境宣言あたりからです。恐らくという予測ですが、私の専門の立場から言いますと、70年代以降にそのシステムは完備していったのではないかと思います。これはコメントです。
白楽 コメントをありがとうございます。DOEの具体的やりかたは知りません。他の研究所は、科学技術関係ですと、NSFがあります。全米科学財団と訳すと、なんとなく民間の組織のようで、誤解を与えるので僕は嫌いなのですが、全米科学財団は連邦政府の省庁の1つです。このNSFが、似たような方式で配分しています。それから、生物関係ですと、大きなところで、ハワード・ヒューズ財団というところが、1人の研究者につき年1億円くらいの大きなお金を出しています。そこは民間です。そこでは、特定の研究者に絞ってとか、最初から、この大学の人から何人応募してください、とか指定します。自由公募と競争的評価というシステムを採用していません。つまり、省庁や団体によって、それぞれやり方が違います。アメリカはそういった多様なシステムを許容します。ただ、生命科学関係ですと、NIHが最大で、数も多いし、額も多いので、今日は、NIHを中心に話しました。省庁や団体によってそれぞれです。多分、DOEも違うやり方をしているのかな、と思いますが、実際は知りません。
司会 では、梶先生。
質問(梶) アメリカのシステムで、ひじょうに素晴らしく、うまく動いているようだと思います。ですが、それは直接は日本には持って来られないところがあると思います。ですから、アメリカの文脈の中で、現在NIHのこのシステムで、問題といわれていることはあるのでしょうか。
白楽 アメリカNIHの研究費配分システムの中でも、問題点はたくさん指摘されています。 例えば、日本の研究費の配分では、競争率を気にしますね。競争率が高いほど、良い研究配分システムだ、と。10人に1人しか通らないよ、といったようなことを、官僚の人は喜んだりします。10人のうち8人も通ってしまったりすると、ちょっといい加減な配分をしているのではないの、という思い方をします。ところがアメリカですと、研究をしたい人が10人いるとします。そのうちの2人しか通らないとなると、8人を落としてしまうということになります。この8人をどうするの、この8人は路頭に迷うじゃないの、この8人の研究も重要じゃないの、という思い方をします。採択率が低いのは、国の予算が充分ではないからで、国の予算をもっと取ってこい、と。研究をたくさんしてもらって、国民に潤ってほしい、という意見が出てきます。ですから、採択率が低いことを誇らないんです。 それから、日本で今検討されていて、これから導入されるかもしれませんが、間接経費というものがあります。アメリカで、1000万円の研究費が通ると、平均で300万円ぐらいの間接経費が自動的についてきます。間接経費というものは、例えば、僕が1000万円を科学技術庁から貰ったとします。すると、1300万円が科学技術庁からお茶の水女子大学にきます。300万円は、自動的にお茶の水女子大学が取ってしまいます。それは、お茶の水女子大学のエレベーターを使い、水道光熱を使い、図書を使い、道路も使う、駐車料も使う、掃除の人も雇わなければならないから、いろいろと使うから、といったようなことで、お金を300万円取ります。それを間接経費といいます。大体平均で3割です。多いところでは、1000万円につき1000万円の間接経費がきます。NIHと各大学・研究所が契約して、間接経費の率を決めます。その間接経費分は、研究に直接使われない。だから、その額を減らせば、もっと実質的な研究にお金をまわせるではないか。間接経費の額を減らせ、という問題が検討されてます。
他にもさまざまです。例えば、今日の話では、プログラム・ディレクターと言いましたが、名前を変えましょう、と。今、実際は、サイエンティック・プログラム・ディレクターなどという名前です。
アメリカは、しょっちゅう変化を求めて、たくさん議論をしながら、実際に変化していきます。いろいろな人が、いろいろな問題を言っています。常に変化しているということが現状です。
司会 どうも、ありがとうございました。時間もおしておりますので、後ほどまた、ということでお願いいたします。白楽先生、どうも、ありがとうございました。
白楽ロックビル氏のセクションは以上。
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